運動効果、認知機能改善、食事、肥満など高齢社会の間違った知識を変え、新たな情報を取り入れ、常識を更新しつづけよう!
寿命が延び、高齢化という社会現象を向かえた今、
いかにして『健康寿命』を延ばすか
というのが誰もが抱える大きなテーマになっています。
人間は誰でも加齢とともに体力が低下していきます。
特に50歳頃から急激に筋肉が減っていき、同時に筋力も低下していきます。
だから50歳を過ぎた頃から、自分の思い通りに動けなくなる、
ということが多くなってくるのです。
動きづらくなった体の改善には、適度な運動で筋力をアップさせ、
筋肉を再び増やす必要があり、そのことは誰もが頭では理解しています。
しかし一方で、「歳をとると運動してもなかなか筋肉が付かない」
と考える人が多いのも事実。
ところが、一度落ちてしまった筋肉でも、
地道なトレーニングで何歳になっても増やすことができます。
最近の研究では、90代でも筋肉が増えることがわかっています。
つまり、運動など何か対策をしなければ筋肉は減る一方ですが、
きちんと対策を打てば、何歳からでも増やすことができるのです。
運動によって筋肉を増やす、というと
「歩く」「走る」など体を動かす働きだけが筋肉の役割のようですが、他にも
「関節や骨格などを支える」
「体の動きを安定させる」
「正しい姿勢を保つ」
ことも筋肉の大きな役割です。
そうなると、筋肉が減ることで動きが悪くなる、思うように動けなくなる、
というだけでなく、姿勢が悪くなる、関節が不安定になる(傷めやすくなる)
ということも発生します。
筋力や体力を維持するために運動を始めたものの、
なかなか長続きしないという中高年の方はかなり多いのではないでしょうか。
もともと運動嫌いの人ならなおさらです。
一人では挫折してしまうため仲間をつくり一緒に頑張る、
というのはとてもいいアイデアですが、
仲間との時間調整などが必要になってきます。
そこで、自宅でもっと気軽に一人でも続けられる方法として、
好きな音楽を聴きながら行う運動がオススメです。
一般的には、リズミカルな音楽(元気の出る曲)に合わせて軽い筋力トレーニングを行い、
ゆったりした曲ではリラックスしてストレッチ、
といったザックリした感じでやるのがポイントです。
できれば知ってる曲なら歌詞を口ずさみながら、
あるいは鼻歌を歌いながらやると結構楽しく続けられます。
音楽教室で有名なヤマハの「健康と音楽」というプログラムがあります。
このプログラムは、音楽と運動を組み合わせることで、
音楽のリズムを脳で分析しながら、運動のテンポを合わせる、
といった2つのことを同時に行うこと(デュアルタスク)で
認知機能の改善にも効果があるというものです。
実際に、三重大学の実験で、
65歳以上の人を対象に、ある一定期間これと同様の運動を週1回程度してもらったところ、
実験終了後には記憶力や計算力などの点数が始める前よりも上がっていた
という結果が出ています。
ちなみに、流す音楽は好きな曲なら何でもOK。
なにより気持ちよく運動できることが最も大切で、長続きの秘訣でもあります。
毎朝のテレビドラマの曲を聴きながら運動する、
と決めればルーティーン(日課)になります。
他にもポイントとして、
・トレーニングもストレッチも、回数や時間は設定しなくていい。
・続けるコツは「運動して調子の良くなった体を想像する」こと。
・調子の悪いときは休む。頑張りすぎはダメ。
などがあります。
ルーティーンの定番といえば、もちろん『ラジオ体操』。
しかし、ラジオ体操くらいでは大した運動にはならず、
大きな効果なんて期待できないと思っている人も少なくないはず。
実は、ラジオ体操には驚くべき効果が含まれています。
特に高齢者には最適な内容です。
・ラジオ体操第1と第2を合わせたエネルギー消費量は、
約50~60キロカロリーでそれほど高くはないが、
全身の筋肉をまんべんなく動かすようにつくられている。
・軽い全身運動により血液循環や新陳代謝が高まり、
無理なく筋力アップも可能である。
・ラジオ体操第1(3分間)だけで13種類の運動が盛り込まれており、
体にある約600の筋肉のうち、約400の筋肉を動かせるようになっている。
・朝は体を目覚めさせる効果があり、事故やケガの防止になる。
午後は、疲労回復やリフレッシュ。
夜は、寝る2~3時間前に体を動かすと、適度な疲れでぐっすり眠れる、
といった行う時間帯でそれぞれの効果がある。
ラジオ体操のポイントは以下のとおり。
・まずは1日1回、3週間続けると体調に良い変化が出始める。
・体操はできるだけのびのびと大きく動くこと。
ただし、体が思うように動かない場合は、
無理をせず徐々に大きな動きにしていくこと。
・体操をしながら今どこの筋肉をのばそうとしているか、
運動の目的を意識しながら行うとより効果が高い。
また、筋力を高めるためには、運動だけではなく「食事」も大切です。
よく中高年者は
「カロリーの高い肉などではなく、野菜のほうが体に良い」
などと考えている人も多いようですが、これも間違った考えです。
50歳を過ぎる頃から、急激に筋肉が減り始める原因は、
運動不足だけではなく、体内の「筋肉をつくる」機能の低下もあります。
そこで、筋肉の原料となる大切なタンパク質が多く含まれる肉や魚も
バランスよく摂取する必要があるのです。
ところが、バランスのよい食事を続けるのも一苦労あります。
食べる量に問題があるのです。
加齢とともに運動量や活動量が減っていくのに対して、
食べる量は減らず、むしろ高カロリーの間食などで
全体の摂取量がかなりオーバーしてしまっている人も多いのです。
そして、長続きしないことの代表は、やはり『ダイエット』。
最近は、その継続困難なダイエットを逆手にとり、
肥満や太っていることに肯定的な風潮があり、
それ専用の雑誌などが人気だったりします。
以前アメリカ社会で、
『肥満者は正規雇用の職を得ることができない』
などといわれた頃がありました。
その理由は、
「自分自身の(体重)管理ができない人間は、自分の仕事も管理できない。企業はそのような人材を求めていない。」
というものでした。
しかし、このような考え方は人権問題になりかねないとして話題になりました。
そのような流れからか、近年、
「肥満でも健康なら良い」
という考え方に賛同者が増えつつあります。
確かに、太っている(肥満)か否かは個人の自由ですし、
毎日元気に生活できていて、周囲に何ら迷惑をかけることがなければ
全く問題はありません。
ところが、医学的にやはり肥満は良くない!
という結果につながる研究が発表されています。
スウェーデンのウメオ大学の
『青年期(平均年齢18歳)の有酸素運動能力が高い男性ほど、早期死亡リスクが低かった』
という研究で以下のことが明らかになりました。
1)標準体重群(BMI18.5以上25未満)では、有酸素運動能力が高い男性は、低い男性に比べて死亡リスクが34%低下。
2)過体重群(BMI25以上30未満)では、同死亡リスクが28%低下。
3)1度肥満群(BMI30以上35未満)では、同死亡リスクが26%低下。
4)2度以上の肥満群(BMI35以上)では、同死亡リスクの低下は認められない。
5)有酸素運動能力が低い標準体重者は、有酸素運動能力が高い肥満者に比べて死亡リスクが30%低下。
※BMI=体重kg÷身長m÷身長m
つまり、肥満者は有酸素運動能力が高くても
標準体重者に比べて早期死亡リスクが高かったという点が重要で、
早期死亡リスク低下の点では、
青年期に低BMI(肥満でない)であることが
健康レベル(有酸素運動能力)の高さより重要であるということになります。
【まとめ】
・高齢になると、一度落ちた筋肉は運動しても増えないと考える人が多いようだが、
実は90代でも地道なトレーニングで増やすことができる。
・筋肉の役割は、「歩く」「走る」などスムーズに体を動かすことと考えがちだが、
「体の動きや関節を安定させる」「正しい姿勢を保つ」ことも大きい。
・運動の長続きの秘訣は、回数や時間は設定せず、
好きな音楽を聴きながら気持ちよく運動すること。
・音楽と運動を組み合わせる(脳と体を同時に作用させる)ことで、
認知機能の改善にも効果がある。
・ラジオ体操程度では大した運動にはならず、効果なんて期待できないと考えがちだが、
全身の筋肉をまんべんなく動かすため、血液循環や新陳代謝が改善し、
筋力アップも可能である。
また、行う時間帯に応じてさまざまな効果もある。
・中高年者は、カロリーの高い肉などではなく、
低カロリーの野菜のほうが体に良いと考えている人も多いが、
体内の「筋肉をつくる」機能そのものが低下するため、
タンパク質を多く含む肉や魚もバランスよく摂取する必要がある。
・近年「肥満でも健康なら良い」という考えが広まりつつあるが、
医学的には、青年期の肥満者は有酸素運動能力が高くても
標準体重者に比べて早期死亡リスクが高いため、
やはり肥満でないことが重要である。
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