オリンピックとパラリンピック、健常者と障がい者、スポーツ義足など競技ツールの国際基準やルールなど考えるべきことは?
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イベント、ビジネスなど, スポーツ関連
エンブレムや国立競技場問題で何かと話題に上る東京オリンピック。
本来、話題の中心となるべきは各種競技や選手たちのはずが、
今のところ残念な状況が続いています。
また、2020年の東京大会に限らず、
オリンピック、パラリンピックについてはさまざまな問題や議論がありますが、
その内のいくつかを挙げてみます。
1)『健常者と障がい者が一緒に参加して、同じ競技を行うことの重要性を多くの人が
十分認識しているものの、なかなか実現しないのが現状。』
2)『毎回、健常者のオリンピックが「主」で、
障害者のパラリンピックが「従」という位置づけになっている。』
3)『パラリンピックにおける「人工装置」について、
国際的に定められた厳格な基準やルールがない。』
1)『健常者と障がい者が一緒に参加して、同じ競技を行うことの重要性は多くの人が
十分認識しているものの、なかなか実現しないのが現状。』について
その理由の1つに、
義足など障害者アスリートを支えるツールの進化
があります。
これによって、障がい者スポーツの競技レベルはここ数年で一気に上がり、
健常者の世界で戦うトップ選手が出現し、
障害の有無に関係なく単純にスポーツ競技として楽しめるようになりました。
これは、驚きとともに目指すべき理想の形であるように感じています。
ところが一方で、
障害者アスリートの健常者を上回る突出した記録には、
義足の性能に疑念の目が向けられ、
義足の優位性を巡っては、度々、議論が巻き起こっています。
2008年、両足義足のスプリンターとして有名な
オスカー・ピストリウス選手(南アフリカ)は、
当初、「人工装置の利用が有利になる」との理由で
北京オリンピックへの出場が認められませんでした。
その後、スポーツ仲裁裁判所は、
ピクトリウス選手の義足の優位性は認められないと判断し、
オリンピック出場は叶いましたが、
義足選手への「加速装置」「道具ドーピング」等の批判が巻き起こり、
今もなおくすぶり続けています。
そんな中、昨年7月のドイツ国内の陸上選手権大会で、
障がい者の走り幅跳びで世界記録を持つマルクス・レーム選手が、
健常者を破って優勝。
このときの記録、8m24cmに対し、
「レーム選手の助走スピードでは義足の反発力なしには無理」
などという異議が出たため、
正式な大会記録として認めるか否かという議論に発展。
最終的にドイツ陸連は、義足の装着が有利に働いたと判断し、
レーム選手の記録を「参考記録」扱いにしています。
このことについて、
「一生懸命トレーニングを積んできたのに、抜きんでた記録を出すと、
それを正当化しなければならないというのは変だ。」
というのはレーム選手の意見。
確かにその通りだと思います。
「誰もが高性能のブレードを装着すれば
速く走れるようになり、遠くに跳べるわけではなく、
選手自身が速く走るための体の使い方や練習法を知らなければ生かせない。
つまり、本人の努力によるところが大きいということを理解する必要がある。」
この意見も全くその通り。
しかしながら、単純に考えて、
ブレードなどの「人工装置」を装着した時点で、
シューズ以外に装着していない健常者アスリートと
「平等で公平性のある競技」にはなり得ません。
例えば、「ブレード」と呼ばれる炭素繊維製のスポーツ義足は、
特有の反発力が記録に表れやすく、走り幅跳びにおいて有利とされています。
その証拠に、トップレベルの幅跳び選手たちは、
人間の足より大きな力を発揮する「義足側で踏み切る」
という共通点があります。
2)『毎回、健常者のオリンピックが「主」で、
障害者のパラリンピックが「従」という位置づけになっている。』について
これまでは、健常者アスリートの記録に追いつくことを目標に、
障がい者アスリートが頑張ってきたという経緯があります。
しかし、これは立場が逆転してもおかしくはありません。
身体に何らかのハンディキャップのある障がい者が、
ブレード等の人工装置を装着して出した素晴らしい記録に、
健常者が追いつくことを目標に頑張る、
という流れになってもいいのではないでしょうか。
そうなることで、双方の競技レベルもさらに向上するはずです。
例えば、車椅子テニスで試合をすれば、
アテネ・北京・ロンドンと3大会連続金メダルの国枝慎吾選手には、
テニスの世界ランク5位の錦織圭選手でもおそらく勝つことはできません。
障がい者が多く参加する過酷な車いすロードレースでは、
どんなに屈強な健常者アスリートでも
相当の練習をしなければ勝てないと思います。
このような場合、健常者に対して
障がい者が「劣っている」あるいは「不利である」
という認識は成り立ちません。
結局のところ、競技種目次第では健常者と障がい者の能力は逆転することになります。
3)『パラリンピックにおける「人工装置」について、
国際的に定められた厳格な基準やルールがない。』について
パラリンピックの選手たちが、
健常者の記録を破ろう、自己の記録を塗り変えようと、
スポーツ義足の性能にこだわり、
その性能を十分に発揮するために体を鍛え、
過酷な練習をするのはごく当たり前のことです。
なぜなら、新たな記録への可能性を広げてくれる
自分にとっての「足」だからです。
当然のことながら、ブレードの各メーカーは、
競技レベルを上げようと性能アップに余念がありません。
そして、性能アップに伴い、価格も吊り上げられていくでしょう。
そうなると、経済的に余裕のある選手とそうでない選手の競技記録の差が、
選手のパフォーマンスではなく、
ブレードのグレード(性能や価格)の差ということにもなりかねません。
そのような問題を防ぐためにも、
競技用義足の素材・形状・性能などの基準を決め、
国際ルールとして導入する必要があるでしょう。
以前、水泳界で問題となったのが「高速水着」。
スポーツメーカー各社が競って開発し、
一時は高速水着が記録を左右するかのような過剰報道もありました。
このことについて、北島康介選手が
「水着ではなく、選手に注目してほしい」
と苦言を呈するほどでした。
陸上競技におけるスポーツ義足についても、
このようなツールの性能が先行し、
肝心の選手が置き去りといった事態にならないようにしてほしいと思います。
最終的には、
健常者と障がい者が同じ競技を行うには、
まず、どちらも平等に参加できる競技種目の選定と、
どちらも使用可能ないわゆる『ユニバーサルデザイン』の競技ツールが必要であり、
選手たちのパフォーマンスを公平に判断するためには、
競技ツールの国際基準やルールを導入する必要があると思います。
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