糖尿病は認知症と関連あり!記憶を司る海馬への影響は?最近注目の筋膜リリースは糖尿病にも効果がある?
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美容、健康、その他
現代社会において、『糖尿病』と『認知症』という疾患名
を耳にする機会は大変多くなっています。
それもそのはず、
糖尿病については、2014年の調査では患者数は316万人超となり、
2011年調査の270万人から46万人以上増えて過去最高となっています。
さらに、糖尿病と糖尿病予備群の合計は2,050万人ともいわれ、
国民の5人に1人が該当することになります。
また、認知症については、2012年の時点で全国に約462万人と推計されており、
約10年で1.5倍に増え、2025年には700万人を超えると推計されています。
これは、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患する計算となります。
このような社会背景から、日本ではさまざまな研究が進んでいます。
認知症の症状には、「脳の細胞が壊れる」ことで起こる「中核症状」と、
「行動・心理症状」ともいわれる「周辺症状」の2つがあります。
中核症状は、認知症であれば誰しもが抱える症状で、
中でも認知症といったときにまず出てくる障害が「記憶障害」です。
記憶についてみてみると、
記憶が脳に蓄えられることはギリシャ時代から知られていますが、
特に1950年代の米国において記憶の研究が飛躍的に進み、
脳の中で新たな記憶を作るために必要な領域と、
昔の記憶を蓄えておく場所は別であることが判明しました。
そして、記憶にはさまざまな種類があることもわかっています。
・『エピソード記憶』:個人的な体験やできごとを日記のようにとどめる
・『意味記憶』:「日本の首都は東京である」など一般的な知識
・『陳述記憶』:エピソード記憶と意味記憶をあわせたもので、言葉で人に伝えることができる記憶
・『非陳述記憶』:言葉で伝えられない記憶
・『手続き記憶』:長い間していなくても、体が覚えていて簡単には忘れない記憶(水泳、自転車など)
・『短期記憶』:数分から数十分覚えている記憶
・『長期記憶』:何日たっても覚えている記憶
このようなさまざまな記憶づくりにかかわる場所が、
人間の大脳の側頭葉にある『海馬(かいば)』と呼ばれる部分です。
そして、繰り返し覚えたり、思い出したりするうちに、
記憶は大脳のいろいろな所に保管されると考えられています。
認知症では、
新しい出来事が記憶できなくなったり、思い出せなくなるなど、
エピソード記憶が障害されることが特徴で、
当然のことながら海馬が関係しています。
これまで、糖尿病がアルツハイマー病発症の危険因子である
ことが研究により明らかにされていましたが、
最近の研究で、糖尿病と海馬の関連についても以下のようなことが判明しています。
・糖尿病は海馬萎縮の有意(少なくとも95%以上の確率で)な危険因子である。
・糖尿病の罹病期間が長い(17年以上)ほど海馬萎縮が進行しやすい。
・糖尿病の診断時期が早いほど(「老年期発症の糖尿病」よりも「中年期発症の糖尿病」の方が)海馬萎縮が進行しやすい。
・糖尿病では、海馬萎縮だけではなく、脳全体の萎縮もみられる。
まとめると、
『糖尿病は脳萎縮と有意に関連し、その傾向は特に海馬で強い。
また、糖尿病の罹病期間が長いほど海馬萎縮が顕著であり、
海馬萎縮の程度は老年期よりも中年期に診断された糖尿病の方が強い』
ということになります。
糖尿病に関する最近の研究では、まだまだ信頼性に欠ける部分もありますが興味深いものがあります。
糖尿病を管理するためには運動療法は必須ですが、
実際には慢性的な運動不足に陥っている患者も多く、
特に下腿部(ふくらはぎ)のこむら返りや足関節の可動域制限により、
運動が困難な患者も見られます。
研究では、このような下腿症状のある糖尿病患者に
『筋膜リリース』を施行した結果、
身体活動量が平均17%増加し、体重減少、HbA1c値の改善などが見られたというものです。
筋膜とは、
伸縮する線維(エラスチン)と形を変える線維(コラーゲン)から成り、
そのコラーゲン線維の癒着によって筋膜の短縮が起こりますが、
その原因は姿勢や外傷などによって生じる「ゆがみ」や「ねじれ」といわれています。
筋膜リリースとは、
このような筋膜のゆがみ、ねじれを解きほぐす手技になります。
通常は、こむら返りなどの下腿症状の改善にはストレッチングが有効ですが、
糖尿病患者の場合、高血糖に運動不足が重なることで、
筋肉の動きに影響を及ぼす筋膜が糖化され、
ストレッチングの効果が出にくいと推測されています。
研究内容では、糖尿病患者のうち、特に下腿症状を訴えた8人を対象に、
約1か月間で2~3回(最低7日間以上の間隔を空け)、
1人5分間の下腿筋への筋膜リリースを実施。
評価項目としては、
①自覚的歩行感覚
②足関節底屈・背屈の感覚的変化
③筋膜リリース後の動き易さの持続感
について、筋膜リリース実施前後の主観的変化(患者自身がどう感じるか)としています。
また、身体活動量として歩数を計測。
その結果、介入3か月後には、
①自覚的歩行感覚、②足関節底屈・背屈の感覚的変化ともに
全例で改善がみられました。
身体活動量も介入前に比べて平均17%増加したこともわかりました。
さらに、平均活動強度の増加、体重の減少、HbA1c値の低下もみられました。
まとめると、
『高血糖は筋膜を構成するタンパク質を糖化させ、筋膜の硬化とともに可動域の制限につながるが、糖化された筋膜に筋膜リリースを施行することで固定化されたゆがみの改善が期待される。
また、活動量が低下した状態にある糖尿病患者では、ストレッチングだけでなく筋膜リリースの積極的な介入により、身体活動の量ならびに質の向上が図れる可能性がある』
ということになります。
とはいえ、この研究では
・対象患者がわずか8例と少ない
・おそらく実験結果は統計処理がされていない(わずか8例なのでできない)
・筋膜リリースという手技についての検証がなされていない
・ストレッチングとの効果の比較がなされていない
・筋膜リリースの積極的な介入という定義がわからない
などなど、限界があるので声を大にしていえる研究内容ではありません。
しかし、今後に可能性を含む内容ではありますので、
この研究をきっかけに糖尿病患者への筋膜リリース効果の有無が
解明されるのではないでしょうか。
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